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研究概要

炭素二次元ナノシート膜を用いた低温作動型水素分離膜の開発

水素を次世代のエネルギー源として利用するためには水素の安定供給が不可欠である。そのためには経済性に優れた水素製造法を利用する必要があり、同時にその分離・精製技術も開発しなければならない。我々はこれまでに、電子導電性とプロトン導電性を兼ね備える酸化グラフェン(Graphene Oxide: GO)を用いて、混合ガスから水素のみを分離する技術の開発に取り組んできた。酸化グラフェン(GO)は、グラファイトを酸化した後、層剥離することによって大量に得られるシート状のナノ炭素材料であり、グラフェンに種々の酸素官能基(水酸基-OH、カルボキシル基-COOH、エポキシ基-C-O-C、カルボニル基-C=O)が接合した構造を有する。この材料を部分的に還元(酸素除去)することで、プロトン導電性とともに電子導電性が表れることを我々は最初に報告した(Chem. Mater. 26, 5598 (2014))。最近になって、この部分還元したGOの積層緻密膜に白金カーボン電極を接合して水素分離に供したところ、Heや窒素が共存するガス中から、水素のみを選択的に取り出すことに成功した。水素透過の原理としてはは次のように説明できる。膜がプロトンおよび電子導電性を有する場合には、膜の片面で供給した水素のアノード酸化が生じプロトンと電子が生成する (Step 1) 。生成したプロトンと電子が膜内を拡散し (Step 2) 、膜の反対側で再結合することで水素が放出される (Step 3) 。

 本分離膜は室温で動作可能で、緻密膜である故CO2やN2はブロックし、混合導電性により水素のみを選択的に透過させることができる。駆動力は水素の分圧差のみであり、高圧や電力は必要無い。GOは天然グラファイトからも製造でき、安価である上、耐久性も高い。また大面積化も可能である。しかしながら、その透過速度は現状では、0.02 ml/min/cm3 (室温・無加圧で30%H2供給時)と低く、実用には大幅な性能向上が必要である。そこで本研究では、混合導電性カーボン膜を薄膜化して透過膜の増大化を図った。そのため、新しい透過膜の構造として、多孔質の支持体上に透過膜の薄膜を積層した非対称型水素透過膜を作製し、大幅な性能改善を目指した。

 多孔質なカーボンペーパー上にGOナノシートを積層して触媒を両面に取り付け、非対称型の水素透過膜を作製した。本水素透過膜は薄膜化によって10倍の水素透過速度を示した。さらに、プロトンのホッピングサイトとなる2-ヒドロキシエタンスルホン酸を膜にドープすることでプロトン導電性を向上させ、表面触媒にパラジウム担持カーボン(Pd/C)を用いて表面反応を促進した結果、室温において無加圧で0.26 ml/min/cm3の水素透過速度を達成した。

「本研究は2023年度 競輪の補助を受けて実施しました」
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